州立コネチカット大学留学報告

トビタテ!留学JAPAN「日本代表プログラム」による州立コネチカット大学留学報告
(本校SSH1期生萬井知康氏が勤務する大学への留学) 令和元年 7/5~8/19(41日間)



 理数科3年の池田夢叶さんが、文部科学省主催の「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム高校生コース」に選抜され、アメリカ合衆国コネチカット州で約6週間の研修を行いました。
 池田さんは、昨年度本校が実施したSSHアメリカ海外研修(H31.2/4~H31.2/9)で、本校SSH1期生の萬井知康氏がアシスタント・プロフェッサーとして勤務している州立コネチカット大学を訪問(下記写真 右端が萬井先生、右から2番目が池田さん)した際の経験で、再度、コネチカット大学を訪問し、研究したいという気持ちが強くなり、上記のプログラムに応募し、採択され、アメリカに41日間留学しました。

(右端がSSH1期生萬井知康 先生、右から2番目が池田さん)

 

以下、池田さんからの現地レポートです。萬井先生のもと、貴重な経験をしました。

 

「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム高校生コース」

レポート⑧帰国編

 帰国日当日は、早朝5時にホテルを出発し、空港に向かいました。まず荷物を預けるところで小さなトラブルもありましたが、なんとか無事に飛行機に乗り込みました。でも、1時間が経過しても飛行機が飛ばず、しばらくすると「出発が遅れる」というアナウンスが流れ、飛行機から降ろされました。乗り継ぎ便に間に合わなくなりそうだったので、スタッフさんに聞いてみましたが、とても冷たい返答でした。日本の航空会社の素晴らしさをとても深く感じました。
 結局、到着先であるシカゴが悪天候のため、その日は遅れて一便だけ飛びましたが、私はそれに乗せてもらえませんでした。しかし、航空会社のミスで荷物だけはシカゴに行ってしまうという大トラブルです。その日に帰ることはできず、その日の晩は、再び萬井先生のお宅にお世話になってしまいました。

 翌日、早朝に家を出発し、ハートフォードからシカゴに向かいました。今度は無事に飛行機に乗れました。シカゴ空港での乗り継ぎでは国際線と国内線の間は何のチェックもなく、行き来は自由だったし、税関もなくパスポートをチェックされることもなく、とても不思議な感じでした。
 今度は大きなトラブルに巻き込まれることもなく、シカゴを出発し無事に日本に到着することができました。荷物も、萬井先生の奥様がハートフォードの空港のスタッフと交渉してくださったおかげで、成田空港で受け取ることができました。

 日本に帰ってきてまず感じたことは、何を食べてもおいしいことです。自分の味覚がおかしくなったのかと思ったくらいです。アメリカの食べ物はどれも高カロリーで、味も日本のものと全く違っており、そのような中で約40日過ごしたのだなと実感しました。
 今思い返せば、長かったようであっという間の40日間でした。いろいろな面でと協力をしてくださった萬井先生を始めとする、すべての方々に大変感謝しています。また、今回の貴重な経験をたくさんの人に伝えていきたいと思います。
 シカゴ空港の様子
  

現地からのレポート⑦

 萬井さんのところで行った、約2週間の研修では、分子を作るところから始まり、発光や吸収を測定するまで、という一通りの実験をすることができました。作りたいものが本当に作れているのかどうかを確認するために、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)を用いました。学生さんにもご指導をしていただいて TLC(薄層クロマトグラフィー)やColumn Chromatography(カラムクロマトグラフィー)をしました。フラスコ内の物質を取り出すための新しい実験器具も使わせていただきました。その器具は、ミクロスパチュラよりもとても効率が良かったです。

 最後の週末は、萬井さんがいろいろな場所に連れていってくださいました。週末には、地区ごとに小さなマーケットが開催されているらしく、ピーチマーケットに行きました。名前とは違ってピーチはあまりありませんでした。その後、萬井さんの知り合いの家族と合流してボートの大会を見に行きました。最後の夕食はタイ料理のレストランに行きました。ご飯の盛り付け方がとても面白かったし、とてもおいしかったです。
 フラスコ内の物質を取り出しています
 
 カラムクラマトグラフィー
 
 学生さんと一緒に
  
 萬井さんと
 
 化学棟の前で
 



現地からのレポート⑥《第6週目》最終週 
 今週も、先週に引き続いて本校SSH1期生でコネチカット大学アシスタントプロフェッサーを務められている萬井知康先生の元で研究をさせていただいています。
 毎日いろいろな実験器具を使って研究しています。まずはサンプルを作り、Spectrophotometer (分光光度計)を用いて吸収を測定したり、Fluorometer(蛍光光度計)を用いて発光を測定したりしました。最初はどの実験器具の使い方にも戸惑いましたが、何度も使ううちに手際よくできるようになりました。実験をすることよりも結果を分析することの方がもちろん難しく、萬井先生に御指導をいただきながら研究を進めています。
 週末は、萬井先生にショッピングモールやオーガニック系のスーパーなどに連れて行ってもらいました。お昼はハンバーガーを食べました。フライドポテトにチーズ!アメリカっぽくて、とても美味しかったです。

 
  萬井先生から実験の指導を受けている様子




現地からのレポート⑤《第5週目》
 今週は、本校SSH1期生の萬井知康先生が勤務しているコネチカット大学化学科の研究室で、光化学の研究をさせていただいています。
 学生さんと一緒に、Suzuki Coupling(鈴木・宮浦カップリング)法を用いて、BODIPY(boron-dipyrromethene:蛍光色素の一種)をもとにしたD-A(ドナーアクセプター)分子を精製しました。研究ではRotary evaporator(ロータリーエバポレーター)、Column chromatography(カラムクロマトグラフィー)を使用しましたし、見たことのない実験器具がたくさんあって驚きです。
しかし、もっと驚いたことがあります。アメリカでは試験管やピペットなどを一回使うと捨てています。日本では考えられないと思いました。毎日約6時間研究していますが、時間が経つのがとても速く感じて、充実した日々を送っています。

 先週までは大学の寮での生活でしたが、今週は大学内のホテルで生活しています。ホテルにはプールもあって、テレビの番組は(もちろん)全部英語なので、英語のリスニングの勉強にもなります。日本のアニメなどもたくさん英語版で放送されています。スーパーにも行きました。一つの食材だけでもたくさん種類がありすぎで、まだまだ驚きの連続です。

 *Suzuki Couplingとは、鈴木章氏が2010年にノーベル化学賞を受賞した、パラジウム触媒と塩基などの求核種の作用により、有機ホウ素化合物とハロゲン化アリールとをクロスカップリングさせて非対称ビアリール(ビフェニル誘導体)を得る化学反応のことです。

        萬井先生から御指導いただいています

 
     実験の様子                        カラムクロマトグラフィー


    ロータリーエバポレーターを使っています




現地からのレポート④《第4週目》

 第4週目は「Pharmacy: Explore the Field」を選択しました。今週は実験や病院訪問など、アクティビティがとても多い一週間でした。
 実験では、特にカプセル薬を作ったのが楽しかったです。2通りの方法でカプセル薬を作り、どちらの方法の方がよいのかを考えました。他にも、いくつかの違う物質を加えた薬を数種類作り、溶け方などを観察しました。
 木曜日に、UConn Health Center を訪問し、見学・体験しました。病院内の見学で驚いたことがたくさんあります。一番驚いたのは、薬の届け方です。カプセルに薬を入れてセットし、ボタンを押すだけでその場所まで届くということです。壁の中のレーンを通って薬が届くようになっていたり、薬を運ぶロボットもいたりで、とても便利だなと思いました。病院には2つのタワーがあり、新しい方のタワーは患者さんの部屋がすべて個室らしく、ガラス張りのため眺めがとても綺麗でした。廊下にはいたるところにテレビのモニターがあって、患者さんの血圧・心拍数などの情報がいつでも確認できるようになっていました。さすがアメリカ、最先端の技術だな、と感じました。

 アンバサダー活動第2弾として友達に茶道を披露して、お茶を点てる体験をしてもらいました。その後、抹茶をアイスクリームにかけたり、牛乳に入れたりいろいろと試してくれていて、みんな抹茶をとても気に入ってくれました。

 ルームメイトは先週と同じだったのでさらに仲を深めることができました。

 今週で、私の留学生活の第一部である「UConn Pre-college Summer」が終わりです。今考えてみると、アメリカに来てすでに4週間が過ぎました。特に最後の一週間は短く感じました。たくさんの人と出会い、たくさん学び、とても充実した4週間でした。一か月間通ったダイニングホールでのアメリカンなバイキングの食事、寮での生活はもう終わりです。
 来週からは第二部が始まります。ホテルでの生活、そして萬井さんの研究室で研究をさせて頂きます。新しい学びと発見がたくさんあるように、一日一日を大切に残りの期間も頑張ります。

  

   実験中、友だちと             薬の製作               


 
  UConn Health Centerの外観                 お茶のお点前です

 現地からのレポート③
《第3週目》

 第3週目は「Digital Animation & Motion Graphics」を選択しました。授業ではアニメーションの基礎からフォントなどの効果について学び、2人1組でショートムービーの制作も行いました。作成したものをお互いに見せ合い、意見やアドバイスなどを交換しました。みんな次々と意見を述べて、いい話し合いができました。

 ワークショップでは “Connecticut Science Center” を訪問しました。とてもリアルな人体模型が刺激的で、筋肉・血管・骨など詳しく観察することができました。課題プリントがあって、理科で習ったことがある用語でも英語がわからないものが多く、問題は理解できたものの、解答を書くのに困りました。Space areaでは地球以外の場所での食べ物の重さのサンプルやプラネタリウムを見ているような映像を見ることができる場所などがありました。

 ルームメイトはカリフォルニアに住んでいる中国人でした。折り紙を体験してもらったり、お互いの言語について話したりしました。彼女は日本語にとても興味があるらしく、ひらがな・カタカナを書く練習をしました。漢字は中国語と同じものもあれば違うものもあるので、お互いにその漢字が表す意味を教え合いました。学校の話でも盛り上がり、日本・アメリカ・中国それぞれの学校の違いについても学びました。

 アンバサダー活動という活動があり、友達に茶道を披露し日本の文化の体験をしてもらいました。お湯がなかなか見つからなかったので、ダイニングホールでお茶を点てました。とても好評だったのでよかったです。

 第4週は「UConn Pre-College Summer」最後の週です。「Pharmacy: Explore the Field」の授業を受ける予定です。

 



現地からの留学レポート②
《第2週目》

 第2週目は「Food Science and Technology」を選択しました。授業は講義が中心でしたが、火曜日と木曜日の午後はラボに行って実験を行いました。
 講義では、食品の背景にある科学技術を学び、健康的な食品の選択方法を考えました。実験では、紫キャベツを用いたpHの測定、アイスクリーム・チーズ・バター作りをしました。クラスメイトとの会話では、日本食のことについてたくさん聞かれ、とても話が盛り上がりました。
ワークショップは5講座受講しました。中でも「Pharmacy Compounding Workshop」が一番楽しかったです。研究室内で、原料の調合から薬を調合し、容器に入れて患者さんの名前を書くところまで、という製薬の体験をすることができました。

 ルームメイトは毎週変わるシステムで、今週はマサチューセッツ州から来た生徒と同じ部屋でした。彼女はとてもフレンドリーで親しみやすく、たくさん話したり、一緒にアクティビティに参加したりしました。そして日本の折り紙を紹介して、一緒に折りました。

 今週は、先週の失敗を生かして、最初に周りの人たちに「ゆっくり話して」とお願いしました。するとみんな、会話の中で分からない単語があった時は意味を教えてくれたり、簡単な表現に言い換えたりしてくれて、会話が弾み、新しいことの学びにも繋がっています。新しくできた友達とのグループチャットでは、アメリカの人たちが日頃使っている独特の表現や、省略した文章表現を学びました。
 また、アメリカのことをたくさん教えてくれて、アメリカらしい飲み物や食べ物に挑戦しました。その中でもアクティビティで行ったStorrs Centerのピザ屋さんに驚きました。なんと、自分で好きな具材・生地などを選ぶことができました。とても美味しかったです。

 第3週は「Digital Animation & Motion Graphics」の授業を受ける予定です。

  
        pHの測定                         薬の調合
 
     薬を容器に入れて完成                  閉講式にて



現地からの留学レポート①《第1週目》

 7月6日(土)に成田空港を出発し、ワシントン経由でハートフォードに到着しました。コネチカット州と日本の時差は、現在サマータイムで-13時間です。日本とは昼夜がほぼ真逆で、最初は時差ぼけで困りました。屋外は日差しが強くてとても暑いのですが、室内はエアコンが効きすぎていて、長袖でいても寒いです。

 現在、「U Conn(コネチカット大学) Pre-College Summer」 に参加しています。大学内の寮に宿泊していますが、週ごとに部屋とルームメイトが変更されるというシステムです。第1週は地元の生徒がルームメイトでした。食事は毎日バイキング形式ですが、アメリカらしい食事で、日本の食べ物が少し恋しくなっています。

 第1週は「Data Science」の授業を選択しました。日曜日にオリエンテーションがあり、月曜日・水曜日・金曜日は授業とワークショップ、火曜日・木曜日は一日中授業です。毎日、夕食後にはいろいろなアクティビティがあります。

この一週間でたくさんの発見や驚くことがありました。参加しているのは、ほとんど現地の人です。もちろん日本人は私だけです。当たり前のことですが、英語を話す速さにとても驚いています。なかなか聞き取ることができないので、何度も聞き返しています。少人数での会話であれば、簡単に聞き返すことができますが、授業では聞き返すことができないので、とても困っています。でも、困っていると、近くに座っていたクラスメイトが何度も助けてくれました。

 「Data Science」の授業では、映画を例に用いて、「cosine similarity」(コサイン類似度:複数の文書などの類似性を表す指数)を求めました。キーボードでの入力が独特で、(私のキーボードは日本語、他の人たちはもちろん英語)とても苦労しましたが、先生がパソコンを貸してくださったり、まわりの人に助けてもらったりで、何とか頑張れました。そして金曜日にはプレゼン発表を無事に終え、一週間の授業が終わりました。土曜日はフィールドトリップでした。

 第2週は「Food Science and Technology」の授業を受ける予定です。

大学は迷子になりそうなほど敷地が広いですが、大学内を歩いているとビーバーや鹿に遭遇しました。コネチカット州は自然がいっぱいで、とてもいい環境です。

 

        大学構内の様子                        授業の様子    
    

          ある日の食事

             Session 1の集合写真